sc-005 軌跡映画1 Cyclops /木村悟之
「軌跡映画」〜数値空間と現実世界と撮影者による即興映画
作者は、ハンディGPSを用いて半径3kmの円周を24時間かけて移動しながら撮影を行っている。極めてストイックなルールのなかで行われたカメラ内編集により、「未知なる風景」に対する身体的反応を、高い純度で記録している。「軌跡映画」とは作者・木村悟之による造語であり、即興映画のニュースタイルである。テクノロジーと身体の関係を、独自の手法で軽やかに示してみせている。
ISBN4-86219-032-4 C0870 3800円(本体価格)+ 税
帯文より
設定と実行・・・これこそが、既に映像の中に生きている我々にとっての「around the world」のための旅行道具である。
「軌跡映画1Cyclops」には「What a Wonderful World」がある。恐るべし日常である。
藤本由紀夫(サウンド・アーティスト)
木村悟之 Kimura Noriyuki
カメラマン、ビデオアーティスト。1977年群馬県生まれ。
2005年情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了。第60回オーバーハウゼン国際短編映画祭 Muvi Award, Second Prize受賞。第18回文化庁メディア芸術祭アート部門 審査員推薦作品に選定。2013年よりデュッセルドルフ(ドイツ)在住。
作家のウェブサイトへ >> http://www.kimurano.com/
「軌跡映画1 Cyclops」において撮影者は、時間、場所、方向を数値によって決定するルールに従って撮影を行う。撮影者は、自分の家を出発し、GPS受信機に表示される緯度、経度の数値をたよりに移動を続けると半径3
kmの円を描いて出発地点に戻ることになる。この円周を36分割した地点で、40分(24時間の36等分)ごとに20秒間、進行方向に向かって撮影する、というのが今回のルール。ただし、私有地や身体的に進行不可能と思われる遮蔽物に遭遇した場合は、遮蔽物に沿って最も近い進行可能な場所まで移動することとした。また90度ごとの撮影場所で撮影者は、その場所の壁や地面にねじを打ち付けることとする。この「ねじ打ち」は、GPSの“数値空間”と実際の環境を重ね合わせるために行われる。以上のルールに基づいて撮影された「軌跡映画1
Cyclops」は、撮影の日付ごと(2004年10月29日、31日、11月2日、4日)に分離した4つの部分、「track 1.1~1.4」によって構成される。/木村悟之