SOL CHORDについて
 
 

撮影行為とアートを結ぶ、DVDレーベル

映像表現の歴史は映画の発明から考えるならば、まだ100年余であり、その先鋒である絵画のクロニクルからすれば現在はまだその創世記にすぎないと言えます。

大文字の政治や大資本が映像の本質であった黎明期を通過し、いわゆるスペクタクルが映像のひとつの主流をつくった時代があったことによる技術の大衆化とそれによる光学機器の拡散が、近代世界における個人制作による映像表現を成立した事実は云うまでもないことだとおもいます。

例えば「個人制作による映像表現」に限れば、これまでもシュールレアリストによるアヴァンギャルドシネマや、60年代に現在のMTV文化などに大きな影響を与えたと言われる、アメリカン・アンダーグラウンドシネマと呼称された作品群がまず古典としてあり、コンテンポラリーアート領域でのビデオアートや、エクスペリメンタル・シネマ(実験映画)と呼ばれる映像作品は、半世紀を経ようとしている今日でも制作されています。更に近年では、パーソナルドキュメンタリーというジャンルも確立されています。

一方でさまざまな個人制作による映像表現領域は、デジタルビデオカメラやPCの普及、それらをもたらすデジタルソリューションなどのロジスクティクスの急速な洗練にともなって、今世紀にはさらに発展していくだろうと考える人は少なくないでしょう。

インターネット環境でインターフェースを通じて映像と接する体験、或いはインタラクティブな様式をもつ、メディアアートでの映像表現の試み、同様に各種のネットゲームが普及する近年、こうした状況に対峙する時間軸表現としての映像作品のあり方は、ようやく再考される時期にきているのではないでしょうか。またCG及びVFX領域における表現技術の洗練や、銀塩表現から光学素子への移行にともない、カメラを用いた、光学的な複製像を扱う「実写表現」の可能性についても同様のことが言えるでしょう。

こうした一連のアーカイブ技術の変更を念頭におきつつ近年の DVD-Video の普及を考えるならば、従来のビデオメディア(アナログ技術)が、単に利便性の高いディスクメディアに置き換わっただけではない変化を感じています。

これまでのビデオメディアのあり方はオリジナルのフィルムやビデオ作品の「"コピー"としての普及」といった状況があることで辛うじて作品としてのオリジナル優位性は保たれていました。これに対し、DVDメディアはデジタルデータを扱うことから、いわゆる"マスター"絶対優位性はこの時点で崩れてしまっていると思われます。誤解を恐れずに断言するならば作家の作品至上性から立脚し「常に作者のオリジナルの作品」として位置づけられるという地平がここにきてようやく開けてきたといえます。この仮説は、例えば写真家にとっての写真集が、展覧会で飾られるオリジナルプリントと同様に、「作品」としてある状況に限りなく近いものだと考えられます。

今後、高精細画像方式(ハイ・ディフィニション)の映像が当たり前にパッケージとして流通するときには、こうした考え方は常に当然のこととして受け入れられるようになるのではないかと私たちは考えています。

そのような時代を見据えながら、作家のパーソナルアイを通じた映像表現を発信するレーベルをなだらかに形成し、出版活動を行っていくことといたしました。

2005年10月 SOL CHORD

 
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