sc-004 7×7 /池田泰教
カメラと日常と撮影者によるセッション、49日間
撮影は49秒ずつ49日間にわたり行われる。撮影するモチーフは作者の撮影行為を通じて即興的に決定されていく。この49日間は7日ごとに空けられるピアスによって分節され、7週間というみえない反復に沿って撮影は行われると同時に撮影者の耳は週ごとにピアスが増えていく。撮影行為における儀式性に着目し、カメラと日常と撮影者のはざまにある「言葉にならない光景」を封じ込めた映像作品。前作、処女作にあたる「たまふれ ver1.4」を併録。
ISBN4-86219-031-6 C0870 3800円(本体価格)+ 税
帯文より
日記にさえ残されることなく零れ落ちる日々の光景。
虚無を紡いでいく日常の結び目に、彼は針(ピアス)を刺す。
不確かな存在を、痛みとともに受け入れるかのように。
須田一政(写真家)
池田泰教 Ikeda Yasunori
1976年福島生まれ。BLUE LICHENS主宰。
栃木県益子町の震災前後を2つの手法で描いた『3PORTRAITS and JUNE NIGHT』、49日間のドキュメンタリー作品「7×7」、場所と演出のルールからドキュメンタリーのように作られるフィクション「モザイク」など、映画による新たなナラティブな形式を模索している。近年は仏レーベルlowave[HUMAN FRAMES]への参加や国内外のフィルムフェスティバル等で発表を続けている。
作家のウェブサイトへ >> http://www.iamas.ac.jp/~ikeda02/
池田くんの映像作品は撮影行為がファインダーを通した主体と光との間接的な関わりそのものであることを思い起こさせてくれる。ピアスを空ける行為は時間分節の通過儀礼なのであり、この儀式を通じてようやく均質な日常に反復作用をもたらしひとつの撮影規則を与えることが可能となっている。同様に「撮影する」ということは光の様相を分節することでもあり、彼がどのようにしてこの切断に関わったのかが重要なテーマとなっている。ある意味では、「彼はそこにいなかったののかもしれない」
収録されている「たまふれver. 1.4」が、池田くんの映像作品の処女作であり、「7×7」は2作目となっているが、よりテーマがクリアとなり先鋭化されてきた印象がある。動画映像そのものを作品化していくスタンスが、これほど明確な作家は珍しいだろう。近年、日本で行われてきた写真表現/批評の仕事を継承するような、その延長線上にある新たな映像表現の可能性を感じさせてくれる。
/SOL CHORD