sc-002 静カノ海/上峯敬
HandycamとPowerBookによる、32分間のサイレント作品
入院した彼女に会うために北海道を訪れる。そのようなプライベート映像が、極めて身体的なリズムによってモンタージュされた新感覚のサイレント作品。静寂のなかでの視覚体験は、独特の没入感覚と速度を感じさせる。軍艦島の空気感が印象的な前作、"12/"、家族の残した8mmフィルムをベースに、3DCG、手描きアニメーションなど、さまざまな手法をミクスチャーした
"in-" の2作品を併録。
ISBN4-86219-005-7 C0870 3800円(本体価格)+ 税
帯文より
恋人が心を病んだ。カメラはなにを撮るか?
上峯君はおそらく、とても難しいことをやっていたのだ。
北国の風景は、何千、何万ものレイヤーとなって、
いつでも彼女と重なって見えていただろうからだ。
高嶺格(美術家)
上峯敬 UEMINE Satoshi
1981年 鹿児島生まれ
2003年 岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]卒業
UEMINE Satoshi
Born at Kagoshima Pref, Japan in 1981
Graduated from International Academy of Media Arts and Sciences[IAMAS]
「静カノ海」は月面図に見つけることができます。月のクレーターや山々にはすでに名前がつけられているようですが、上峯くんは月にあるその水のない海をタイトルに選んでいます。この32分間のザラっとした独特の質感はまるで印象派の絵画を思い起こさせます。印象派の画家が一枚のキャンバスと対話しながら、絵の具を塗り重ねて完成に近づけていくように、彼もマウスを握りながら何度も何度もその映像を見たに違いありません。そのような「見ること」の集中力が作品に封じ込められているのではないでしょうか。ハンディカムによる撮影、PowerBookによるノンリニア編集といった制作スタイルは、今日では珍しいことではないかもしれませんが、この作品ではその新次元を感じさせてくれます。
/SOL CHORD